お金・保険

医療保険制度についてわかりやすく解説!対象者や制度の仕組みとは?

悩んでいる人

・医療保険って何?どういう制度なの?
・まだ若いし自分には関係ないの?

このようなお悩みを解決します。

本記事の内容

  • 日本の医療保険制度についての説明
  • 医療保険制度の対象者について
  • 医療保険制度の利用方法について

記事を書いている人

日本には、将来起こるかもしれない万が一のリスク(病気や怪我など)に備えるために、「社会保険制度」があります。

社会保険とは?日本の社会保障制度をわかりやすく解説!みなさんは「社会保険」について正しく理解しているでしょうか。「健康保険」や「厚生年金」など、毎月の給与から数万円という大きな金額が控除されている理由をわかりやすく解説します。...

この「社会保険制度」の中には「医療保険制度」というものがあります。

1961年以降、日本ではすべての人が公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」が導入されました。

この「国民皆保険制度」が導入されたことで、病気や怪我などの万が一のリスクに備えることができ、誰もが安心して生活をできるようになりました。

この医療保険制度について、多くの人がイメージしやすいのは主に医療機関を受診した時ではないかと思います。

私たちが病院等で支払う金額は治療費全体の1〜3割であり、基本的に支払い金額の7~9割が免除される仕組みになっていまたます。

普段の受診から手術などの大掛かりな医療行為にまで幅広く対応しており、これにより莫大な医療費の負担を避けることができます。

皆さんは医療保険制度について理解していますか?

今回は医療保険制度について、加入者が多いであろう「健康保険」を中心に、対象者や制度の概要についてわかりやすく紹介していきます。

ジン

病院を受診した際に利用する医療保険。その保険料は給与から毎月天引きされています。
自分の給料が何に使われているのか、この機会に勉強しましょう。

医療保険制度とは(種類・対象者)

私たちが病気や怪我をした場合に、必要な医療サービスを保証してくれるものが医療保険制度になります。

病院やクリニックを受診した際、実際に支払う金額は治療にかかった金額の原則3割となり、残りの7割が医療保険制度によって賄われているということになります。

医療保険制度は職業や年齢などに応じて種類が分かれますが、誰もがいずれかの保険に必ず加入することになります。

医療保険制度の種類、対象者は大まかに分けると以下のようになります。

種類対象者
健康保険会社員や公務員、その家族等が対象
国民健康保険自営業者、その家族等が対象
後期高齢者医療制度原則75歳以上が対象

上記の通り「その家族」までが対象者となるので、学生の頃までは親の扶養に入り、親の医療保険サービスを受け、社会人になってからは扶養を外れ、自分で医療保険に入るというケースが多いのではないかと思います。

医療保険料はいくら?

高校・大学を卒業後、企業に入社する会社員が多いと思うので、今回は「健康保険」の保険料について簡単に説明します。

医療保険に限らず、社会保険の保険料は「労使折半」と呼ばれ、自身と会社とで半分ずつ負担します。

皆さんは保険料を払っているという認識があまりないと思いますが、毎月の給与からしっかり天引きされています。(「健康保険」のような名称で控除されているかと思います)

この保険料は「定時決定」という方式を用い*、毎年4〜6月に支払われた給与(報酬額)をもとに「標準報酬月額」を算出し、決定されます。
* その他「資格取得時決定」「随時決定」という方式で決まる場合もあります。

保険料の計算例

標準報酬月額、及び保険料率については全国健康保険協会の都道府県別保険料額表を参考にしてください。

ホーム > 協会けんぽ > 保険料率 > 都道府県毎の保険料額表 > 令和3年度保険料額表 > 令和3年度保険料額表(令和3年3月分から) とお進みください

(例)
4月:190,000円、5月:210,000円、6月:200,000円の給与があったと仮定

番号項目金額
4〜6月の合計給与600,000円
②=①÷33ヶ月の平均給与(報酬月額)200,000円
標準報酬月額200,000円
健康保険料率(〜39歳の場合) *40〜64歳の場合12.02%10.22%
⑤=③×④健康保険料(同じ金額を会社も負担)11,242円
上記計算は、福岡県の数値を使用

賞与(年3回以下)については、別途「標準賞与額」に保険料率を乗じて算出した額が「健康保険料」として天引きされます。

報酬(給与)とみなされるもの

現金給付現物給付
報酬となるもの・基本給
・家族手当
・勤務地手当
・通勤手当
・時間外手当
・宿直、日直手当
・皆勤手当
・役職手当
・住宅手当
・扶養手当
・年4回以上の賞与 など
・通勤定期券
・回数券
・食事、食券
・社宅、寮 など
報酬にならないもの・結婚祝い金
・見舞金
・解雇予告手当
・退職手当
・出張旅費
・交際費
・慶弔費
・傷病手当金
・年3回以下の賞与 など
・制服
・作業着(業務に要するもの)、
・見舞品
・食事* など
* (本人の負担額が、厚生労働大臣が定める価額により算定した額の2/3以上の場合)
参照元:日本年金機構「算定基礎届の記入・提出ガイドブック 令和3年度

医療保険の給付内容

医療保険制度に加入することで受けられる給付(=サービス)には「現物給付」「現金給付」があります。

「現金給付」は、その名の通り、現金を受け取ることができる給付で、「出産手当金」や「療養費」などがあります。

「現物給付」として、イメージがわきやすいものは「療養の給付」だと思います。

この「療養の給付」とは、病気や怪我になった場合に、現金がもらえるわけではなく、病院等を受診し「診察」や「手術」といった「治療」という行為により給付されるもの(現物給付)になります。

「治療を受ける」という行為自体が、医療保険制度に加入していることによって受けられる給付ということになります。

また、この治療行為はすべて無料(毎月の保険料のみで賄われる)というわけではなく、一部負担金を支払う必要があります。

負担金=病院の窓口で支払う金額、であり、治療費全体の3割の金額を支払うことになります。

この負担割合は年齢、収入、また各地方自治体の制度により異なりますが、原則以下のとおりです。

対象者負担割合
義務教育就学前2割
義務教育就学後〜69歳3割
70〜74歳2割(一定以上の所得がある場合は3割)
75歳以上1割(一定以上の所得がある場合は3割)


また、「療養の給付」を含め、健康保険で受けることができる給付には、以下のようなものがあります。
全国健康保険協会さまの画像を引用させていただきます)

※被保険者=健康保険料等を支払っている会社員
 被扶養者=被保険者の家族

(引用元:全国健康保険協会ホームページ
給付の種類概要
療養の給付病院等で受けることができる治療行為
入院時食事療養費入院時に提供される食事費用(原則1食あたり460円の自己負担ですむ)
入院時生活療養費65歳以上の入院患者(*1)にかかる生活療養費
(*1は食費の他に居住費の負担が必要(原則1日あたり370円))
保険外併用療養費先進医療等、特別な療養を受けた場合に給付
(通常、保険が適用されない先進医療などと「療養の給付」を
同時に受けることはできない(=混合診療の禁止)が、
厚生労働大臣が認めた先進医療などに関しては、同時に「療養の給付」を受けられる)
訪問看護療養費自宅で継続して療養を受けた(訪問看護師等の訪問)場合に給付
療養費「療養の給付」ができない場合(無医村など)に支給される現金給付
高額療養費自己負担額が一定の割合を超えた場合に給付
高額介護合算療養費世帯内の同一の医療保険の加入者について、医療保険と介護保険の自己負担額が
一定の割を超えた場合に給付
移送費病気や怪我で異動が困難な患者を、医師の支持等で移動させた場合に給付
傷病手当金業務以外での病気や怪我で働くことができなくなった場合に給付
出産育児一時金被保険者が出産した場合に給付(一児につき原則42万円)
出産手当金産休の際に、会社からの給料が出ない場合に給付
埋葬料被保険者が死亡した際に支払われる給付
家族療養費「療養の給付」ができない場合(無医村など)に支給される現金給付
家族埋葬料被扶養者が死亡した際に支払われる給付
家族出産育児一時金被扶養者が出産した場合に給付(一児につき原則42万円)

高額療養費制度とは

医療保険制度を利用することで、私たちは1〜3割の負担で良質な治療を受けることができますが、長期の入院や高額な手術となった場合に、自己負担額が高額になることもあります。

自己負担額が基準額を超えた場合に支給されるのが高額療養費となります。

1月当たりの自己負担額は以下のようになります。(70歳未満の場合)

標準報酬月額自己負担限度額
① 83万円以上256,000円+(総医療費*ー842,000円)×1%
② 53万円〜79万円167,400円+(総医療費ー558,000円)×1%
③ 28万円〜50万円80,100円+(総医療費ー267,000円)×1%
④ 26万円以下57,600円
⑤ 市町村民税の非課税者など35,400円

以上のように、所得が高いほど自己負担額が高くなります。

また、「総医療費」とは、同じ月(1日〜末日)に、同じ病院、同じ病気の治療にかかった医療費のことであり、月をまたいだ場合は高額療養費の対象となりません。

例を出すとこのような感じです。

(ケース1)標準報酬月額26万円以下(上記表で④)の人が腕を骨折し、A病院で治療を受け、4/1〜4/30の間の総医療費が120万円の場合

(ケース2)
標準報酬月額26万円以下(上記表で④)の人が腕を骨折し、A病院で治療を受け、4/15〜4/30の間の総医療費が60万円、5/1〜5/15の総医療費が60万円、計120万円となった場合

ケース1ケース2*
総医療費120万円120万円(60万円+60万円)
医療保険による自己負担額40万円40万円(20万円+20万円)
高額療養費制度を用いた場合の
自己負担額
57,600円115,2000円
* ( )内は、(4月+5月)の金額

ケース1、2どちらも同じ病院、同じ病気、同じ治療であり、治療にかかった日数が同じだとしても、月をまたぐかどうかにより、自己負担額が大きく異なります。

病気や怪我の発生時期をコントロールすることはできませんが、どのように制度を利用するとお得になるかということは理解しておいて損はありません。


医療保険の対象外となる医療行為

原則3割負担で医療行為を受けることができる医療保険ですが、その対象外となる医療行為も存在します。

医療保険の対象外となるもの(例)

  • 美容整形
  • 先進医療
  • 差額ベッド代*
  • 業務上の病気や怪我**
  • 通勤途中に発生した事故**
  • 出産(出産育児一時金の支給はあり) など

* 4人以下の部屋に入院した際に請求(主に個室)。必ず請求されるわけではなく病院によります。
** 労災保険の対象

まとめ

今回は医療保険制度について説明しました。

私たちは普段の生活から怪我や病気のリスクがあり、そのたびに医療機関を受診することになります。

小さなものから大きなものまで、医療行為には様々な分類がありますが、そのほとんどが医療保険の適応となります。

月々の健康保険・国民健康保険料は決して安いものではありませんが、今回の内容で制度の存在意義や大切さについてご理解いただけたかと思います。

いざという時に備えて保険料の納付は怠らないようにしましょう。